財政政策に対する思想とその変化のはなし
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財政政策に対する思想とその変化
1960年代から1980年代にかけての日本では、財政政策による景気安定化が試みられた。マクロ経済学で用いられる標準的モデルのひとつであるIS-LMモデルを用いると、財政政策と金融政策の適切な組み合わせによって景気変動を安定化できることが分かる。政策金利の引下げなど金融政策による経済への影響が政策の発動から時間を要するのに対して、財政政策による効果は発現までの時間が短いとされることが多い。マネーサプライの増加が名目GDPを増加させるまでには数四半期かかるとされることが多いが、公共事業の増加などは支出の時点で効果を発揮する。このため財政政策を用いて経済の変動を安定化させるというファイン・チューニングという考え方が広まった。
しかし、公共事業を実施するにはまず予算措置が必要であり、国会や地方議会の議決を必要とするので、政策の決定から実施までの期間は必ずしも金融政策よりも短いとは限らない。米国の経済学者の中には、米国では財政政策はしばしば景気変動を大きくしてしまったという見解も多い。
マンデル=フレミング・モデルを用いると、金融緩和を伴わない場合、財政政策による景気刺激は金利上昇によって設備投資のクラウディング・アウトを引き起こしてしまうことや、資本移動が自由の場合、金利上昇が為替レートの増価(日本の場合であれば円高)を引き起こして輸出減少・輸入増加が起こることによって、当初の財政支出の増加の景気刺激効果を減殺してしまうことが分かる。1970年代から80年代にかけての日本では、こうした効果を緩和するための金融政策と財政政策の最適なポリシーミックスのありかたがマクロ経済政策の課題とされた。
しかしその後、アメリカではルーカスやバローらの批判による「裁量」から「ルール」への経済政策の転換、さらに、汚職や財政赤字、効率の悪化といった「政府の失敗」などにより、今日では、裁量的な財政政策による景気変動の安定化が専門家から支持されることはほとんど無い。米国では1980年ころから景気変動の安定化は金融政策の役割であると考えられるようになっており、その後の経常赤字のもとでの資産市場の活況をもたらしている。したがって、財政政策の目的は景気対策ではなく、恒常所得や資本の増加を目的とした恒久的な減税や、歳入を増加させるための増税、もしくは政府にしか供給できない公共財の提供や補助などが、財政政策の中心となるべきと考えられるようになった。
日本では1990年代初めにバブル崩壊によって景気低迷が続いた際に、当初は財政政策による景気刺激が試みられた。しかし2001年に小泉内閣が成立して以降は、公共事業の削減が進められ、財政政策による積極的な景気刺激によって経済を安定化させるという考え方は後退し、量的緩和政策など金融政策によってデフレからの脱却を図るという考え方に転換している。日本では依然として財政政策の有効性を主張する学者やエコノミストも多いが、経済安定化の主な手段は金融政策であるという方向に転換しつつある。
引用『ウィキペディア(Wikipedia)』
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